Rayのドイツ音楽留学レポート【第9回】ドイツの音大の授業その1

メリークリスマス! Rayです。私はドイツで音楽の勉強をしている大学院生で、オーボエという楽器を専攻しています。

先日のドイツ議会でのメルケル首相の演説が心打たれる素晴らしいものだった、と日本のニュースでもとりあげられたようですが、対してドイツの新型コロナウイルスの状況はここ最近、恐ろしく悪いです…。私の周りにもじわじわ来ていて、誰々の彼女の職場に感染者が出たから彼女は二次接触者になってPCR検査を受けた、などという話が耳に入るようになりました。

ドイツは12月半ばからロックダウンしていて、それまでの部分的ロックダウンから規制がさらに厳しくなりました。このロックダウンに伴って現在、私の通う音大は練習室も含め全部閉まっており、私たちのようなクリスマス休暇も実家に帰らない組は練習場所の確保に苦労しています。年明けにはロックダウンが終わって学校で心置きなく練習できることを願うばかりです…

さて、今回はドイツの音大事情をご紹介します。

大学院生の授業

音大に飾ってあったクリスマスツリー

大学院のオーケストラ科に在籍する私の必修授業は以下の内容です。

  • オーボエのレッスン(二年間)
  • 持ち替え楽器のレッスン(一年間)
  • オーケストラスタディのレッスン(二年間)
  • コレペティトゥアのレッスン(二年間)
  • 室内楽(一年間)
  • オーケストラ(一年間)
  • オーケストラ実践(一年間)
  • アナリーゼ(一年間)
  • 論文の書き方(半年)
  • コンセントレーション・テクニック/本番でのテンパらないための講義(半年)
  • 修士論文(卒業時)
  • 選択授業(一年間)
  • 卒業演奏(卒業時)

私が日本の音大で学部生だった時には講義系の授業もたくさんあったので、授業・オーボエの練習の毎日でした。ドイツでも学部生は履修授業が多くて忙しそうにしています。

大学院生になってからのほうが、自分の練習や学外の活動に挑戦する時間がたくさん取れています。(といっても、去年はドイツ暮らし初心者のため勝手がわからなかったのと、最近はコロナで大学以外の活動が制限されているのとで、実際にいつも学外活動に忙しいわけではありませんが…。)授業に追われない分、一曲を自分の力でより丁寧に仕上げたり、音楽のことに限らず自分を見つめる時間にあてたりしています。

今回の記事では、上記の授業のうち実技系の授業をご紹介します。

オーボエのレッスン

教授によるレッスンです。私の先生は、所属先オーケストラの仕事の合間を縫って他の街から来られます。大体は数日間滞在して数回レッスンをしてくれます。(そうすると一週間に1度というカリキュラム通りの回数になります。)

ある時は後述のコレペティトゥアさんについてきてもらって、一緒にオーボエとピアノのためのスタンダードのレパートリー、またある時はピアノなしの曲やオーケストラのオーディション対策の曲を見てもらいます。

レッスンに限った話ではありませんが、毎回のレッスンに向けての準備がとても大切です。まずは先生に頼らず自分で音楽を組み立てて、そのうえでレッスン中に得たアドバイスをもって演奏を深いものにできるよう心がけています。

オーケストラスタディのレッスン

アシスタントの先生によるレッスンで、二週間に1度あります。オーケストラ曲の中のオーボエの重要なソロをレッスンしてもらって、オーケストラのオーボエ奏者にとっての超定番曲を勉強します。

ソロ曲では自分の解釈による美しい音楽を表現する力が求められますが、オーケストラスタディ(オケスタ)の演奏では何人もの音楽家と演奏を共にするための柔軟性・確実性も求められます。また、オーケストラのなかでオーボエに求める役割は作曲家ごと、作品ごとに異なります。この音楽にはこの音、この表現、というのを現役オーケストラ奏者である先生の指導の下、日々腰を据えて勉強しています。

持ち替え楽器のレッスン

上のオケスタと同じく、こちらもアシスタントの先生によるレッスンで、オーボエの同族楽器の一つ、イングリッシュホルン(フランス名コールアングレ)の基礎的な奏法からレパートリーまで見てもらっています。この授業は学部生も受けています。

日本では主専攻のレッスンの中にすべて組み込まれていたので、オーボエの先生がレッスンに来られるたびに「ソロ曲を見てもらいたいけどオケスタもイングリッシュホルンもレッスンしてもらいたい!レッスン時間足りない!」と思っていました。ドイツでは内容が分かれている分、じっくり時間を取ってもらえます。しかし、場合によっては一日のうちにオーボエ、オケスタ、イングリッシュホルンとすべてのレッスンが重なることがあり、そんな時は昼ご飯を食べるのも忘れてしまう程忙しい一日になります。

コレペティトゥアのレッスン

以前もコレペティトゥアとの授業に触れましたが、学校の非常勤講師であるコレペティトゥアの先生から共演する上での意見を得ることができます。コレペティトゥアさんは共演ピアニストとして経験のある方で、オーボエとピアノのための曲をたくさんレパートリーとして持っています。

毎日の個人練習では曲の中のオーボエとピアノの掛け合いをイメージしていますが、頭で考えている時と実際にピアニストと演奏するのとでは楽しさ、難しさが段違いです。一度にひとつの音しか出せないオーボエにハーモニーやピアノによる低音でのリズムが加わることで、様々な感情や情景が音楽の中に現れます。

定期的なコレペティトゥアとのレッスンは、ここはオーボエが主導権を握る箇所、ここはピアノの音にオーボエの音を溶け込ませる箇所などとバランスを考えるきっかけになっています。

室内楽

去年のクリスマスコンサートの舞台の様子。今年はお客様を迎えることはできませんでした

少人数アンサンブルの授業で、今は木管五重奏を組んで勉強しています。日本にいた時は毎週室内楽のレッスンがあり、いろいろな編成の曲を経験しましたが、ドイツの今の大学でのレッスン頻度は、組んでいるグループと室内楽を担当している先生とのコンタクト次第です。

一年を通して授業を受けた後にコンサート形式の修了試験を受け、単位が認定されます。バロック、古典、ロマン、近現代という異なる時代の中から曲を組み合わせて一時間程度の演奏となるように、というのが試験曲の条件です。ということで今のグループに合っている曲は何か考えながらリハーサルしています。

ドイツ政府の発表したコロナ対策に接触人数の制限やソーシャルディスタンスの指定があったため、一時は「複数人で集まって演奏することは難しいのではないか?」と心配していました。しかし、広い練習室を予約すること、部屋を使うたびに名簿を学校に提出すること、といった大学の既定のおかげで、コロナ禍でも室内楽を経験する機会を失いませんでした。

オーケストラ

半期に1度学校主催のオーケストラ公演に出演すると単位認定されます。具体的には公演1週間前から集中リハーサルに参加、本番で演奏して終わりです。

日本の音大オーケストラでは、一年を通して様々な演奏会、曲に取り組むことができましたし、週一回の授業では管弦打楽器の先生がいらっしゃってアドバイスをくださいました。

それと比べると今の音大でのリハーサルから本番までの期間が一週間強なのはあっという間に感じます。それに、私はすでに秋冬学期の初めにコンサートに出演したので、次の春夏学期まで音大オケで演奏する機会は回ってきません。100人の熱量を感じられるオーケストラの響きが大好きな私は、少し寂しいです。

オーケストラ実践

大学のある州にあるいくつかのプロオーケストラの演奏に実習生として参加するものです。私は、ちょうどこの時期に実習に行く予定でしたが、コロナ禍のためオーケストラ編成の縮小や公演そのものが中止になってしまい、延期になりました。いつこの実習ができるのか未定です…。

まとめ

現在ドイツでは演奏会が行われていないので、舞台に立っていた日が懐かしいです

大学院の授業内容のうち、オーボエを使って履修する授業について書きました。日本とドイツの授業を比較すると、日本ではオーケストラや吹奏楽、室内楽など他の人と演奏する授業がより充実していた印象があるのに対して、ドイツでは個人指導の時間の中でオーケストラ奏者にとって大切な能力を磨いていき、それを合奏で実践するカリキュラムになっているように思います。

日本でもドイツでも恵まれた環境であることは確かなので、ありがたい限りです。

最後までお読みいただきありがとうございました。次回は2021月1日9(土)に更新します。テーマは「ドイツの音大の授業 その2」として大学院生の授業のうち実技以外のものについて書く予定です。

皆様、よいお年をお迎えください。

Ray

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