小雪のハンガリー音楽留学レポート【第7回】

小雪のハンガリー音楽留学レポート【第7回】

第7回 情勢
今回は、最近のハンガリー国内事情に関してです。約2年前に勃発した隣国ウクライナでの戦争の影響、また国内政治やそれに関連した選挙運動の様子、さらに生活面や通貨事情などについてレポートしていこうと思います。

—政治・政権
ハンガリーはEU連合に所属していますが、独自の主義を唱え、確固たる地位を築いてきた背景があります。その為、対EU法への姿勢は今も変わらず、大きな結果として現れたのが、ウクライナ支援の断固拒否とロシアとの外交継続です。この流れで問題となっている移民の受け入れも、正式な手続きなくしては寛容に受け入れない姿勢に、EU各国からかなり批判されている印象があります。ヨーロッパという大きな州の一つの国として、どれだけ各々の政治や情勢がしっかりと基盤を持っているかがとても重要だと感じます。

 その影響は、国民一人一人、特に若者の政治関心の強さとして反映されていると考えます。

ハンガリー独立記念日の週には国旗を街中に飾り、祝福モード全開。

同じ独立記念日の週に、日本で言うところの赤十字バッヂのように、国旗のバッヂも至るところで見かけ、これは学校の図書館の案内用紙に飾ってありました。実際、写真のバッヂを胸に付け出かけている人も多く見かけました。

 私が受講していたハンガリー語の授業に、多くの国籍の学生がいたのですが、ポーランドやドイツ、イギリス、クロアチアの方達の話では、投票日の朝から長時間並び投票するそうです。これはごく当たり前で、どれだけ自分の意思が反映されるのか、どれだけ政治を通して国家の行く末に貢献できるか、その様子を話す様の真剣さに驚かされました。

最近まで行われていたハンガリーの選挙活動、各アパートの住民に活動チラシが配布されます。ぱっと見ですが、候補者の年齢層が男女共、日本より若い印象です。

 こういった話を同年代の人たちから聞く度、日本で行われる地方選挙の投票率の低さに呆然とします。やはり、島国と内陸国の歴史的背景の違いが、国民の意識に影響しているのだと思います。さらにハンガリー語の授業の先生からの情報なのですが、選挙権はハンガリー国民だけでなく、滞在許可証とビザを取得していれば、留学生や外国籍の人でも投票が可能なのだそうです。これは良いのか悪いのか、政治に関心ある者は拒まずということなのでしょう。

—経済事情
経済の向上を図る試みに取り組んでいるのが、EU連合に加盟している国に共通することだと思います。そしてそれらの国々は、そのためには平和の実現が肝要だと考えているのだと思います。国家の安定なくして世界の平和あらず、そんな感じでしょうか。

 未だ、ハンガリーでは国内通貨フォリントを基盤としていますが、多くの加盟国はユーロ通貨で統一され、物資の流通や経済成長に寄与しているそうです。ハンガリーはEU加盟により、2008年からの景気低迷からの復活にEU補助金に助けられ、2014年に回復した背景があるそうです。その通貨を日々利用する生活面において、世界共通である物価の高騰が大きなダメージを与えています。たった3、4年の間に、倍以上に値段が上がっており、こちらで生活を始めて出会った多くの留学生は口を揃えて物価の高騰を嘆いています。実際、つい最近一週間ほど前の出来事で、あるスーパーで牛乳が100フォリント弱値上がりをしていて驚きました。上記に挙げたように、経済が回復へ向かっているとしても、通貨価値が一気に上がる訳ではないようです。

 現に、日本の円安事情は異常なほどに深刻化していますが、その円安よりも安いのがフォリントです。その為か、多くの人々はフォリントではなくユーロでの取引を希望し、実際に、私の住んでいるアパートの大家さんとはユーロで家賃の支払いを行っています。さらに、土地や家賃の値段も、ここ数年でかなり高騰しているそうです。そんな状況下において、国民の為に全身全霊尽くすのか、はたまた国家の名誉を貫くのか、昨今の世界情勢がこの大きな問題を提起しています。

 その影響を、一心に受けているといっても過言ではないのが、税金の使い道だと考えます。最近、ある動画内でウクライナ人女性が発言していたのが、国民の税金を軍隊支援に使い込んでいる為に、税金の値上がりに加えて財政が暴落し、各国からの物資支援が疎かになりインフレが起こった、私たち生きている人間までもが殺されていると嘆いていました。確かにウクライナへの侵略が始まって以来、このことはEU加盟国の重要課題となっています。他の国々は団結して支援し続けていますが、ハンガリーは国民の生活を第一に、今なおロシアとの関係性は保ちつつウクライナ支援に協力しない一方で、敵味方の区別はしない姿勢を貫いています。

 その結果、ハンガリーではヨーロッパ国内で深刻化しているガス代は値上がりせず、戦争や紛争による移民を正式な手続きなしには受け入れず、国内情勢の安定がなんとか保たれているのは事実なようです。ヨーロッパの主要国家であるオランダやスペインなどでは、移民による国民への被害が異常化し、観光客を攻撃の的に変え、水鉄砲で嫌がらせをしながら「自分の国へ帰れ」と、デモ行進が起こっているのが最近の話題です。現代の各国の大きな国家収入源となっている観光業に、ましてや観光客対して敵対心を抱いたとて、どのようにして生き残っていくのでしょう。これからの世界情勢の変動において、私たちの生活に大きなダメージとなり得る、物価、通貨価値、経済、治安などの混乱がいつまで続くのかと、ヨーロッパでの生活を始めてからひしひしと感じる日々です。

 さて次回は、民族と言語の歴史的背景について、内陸国における大変動を経てどのような民族が交わり言語が誕生したのか、またどのような文化がともに定着していったのか、そうした内容を紹介していければと思います。