2026,2,2 第25回 音楽院の歴史と建築②
前回のリスト音楽院の建築の歴史に引き続き、今回は音楽院に建設しているホールについてです。ほぼ毎日のように開催されるコンサートに、多くの観客で埋め尽くされるホールは、何十年と経った今なお、人々を魅了しています。これとは別に、在籍する学生の試験会場ともなり、より身近に感じる場所でもあるホールに関して、レポートにしていこうと思います。
—音楽院の歴史と建築②
リスト音楽院のホールはそれぞれ、リスト像やハンガリー国家国旗とEU連合旗がある正面玄関口から入ると、目の前に大ホール、階を一つ上がったところに小ホールがあります。造りのおそらく9割を占める基盤には、大理石がふんだんに使われていて、そのずっしりとした佇まいが、音楽の響きを助け、会場中にはもちろん、建物全体に巡り渡らせています。時々、私も練習室を予約し本館で練習していると、遠く離れた3階でもかすかに演奏が聴こえるほどです。


【音楽院の正面玄関口。】
まず、大ホールの一階席に入ると、歴史あるヨーロッパらしさを感じるホールは圧巻です。広々とした空間に開放感があり、意外にも舞台と客席との距離が近いのは驚きでした。演奏会の概念として、日本では大きな舞台を軸に、客席が全員平等に演者を見られるような階段式になっていますが、ヨーロッパでは多くが客席も舞台も簡素的です。これは演奏会の歴史のスタートでもある、宮廷の大部屋で行われていたようなサロンの延長上にあるのかもしれません。その分、ホールの装飾は凝って造られています。

【大ホールの一階席からの様子、とても広く多くの客席が見てとれる。】
二階席は中央と左右に客席があり、また違った景色の眺めになります。正面の席からは大きなパイプオルガンが見え、大小さまざまなシャンデリアや天井の絵画など、より細かに見ることができます。私たち学生には縁のない場所ですが、ホールの真横に位置するボックス席があり、時より、演奏者の関係者らしき人たちが座っています。三階席は正面の席のみで、一列目ともなると高さにヒヤッとしますが、演目の場面を変える為に、例えばグランドピアノの入れ替えや、他にもオーケストラの全体像を見られたりと、全てを違った角度で見れる良さがあり、学生にとっては、無料で演奏会の種類を問わず聴ける特権は素晴らしいとしか言えません。さらに、より天井との距離が近くなるので、複数の絵画の絵柄の違いや装飾の緻密さなど、肉眼での楽しみが増えます。

【大ホールの三階席からの様子、こういう景色での演奏会は日本ではなかなかないので面白い。】
次に小ホールです。ここは先ほど紹介した大ホールの二階席と同じフロアにあり、時より同じ時間帯に演奏会が開かれていると、ドアから覗き見する人たちを見かけたことがあります。小ホールは舞台と客席との距離が近く、より従来のサロンらしさが感じられます。ここは冒頭の説明にもあったように、学生の受験や試験が行われる会場となり、大ホールとは違い、色々な思いのある場所です。ちなみに今回の近況報告に挙がるコンサートが、ここ小ホールにて開催されました。会場の造りはというと、クラシックよりかはモダンに近い感じがあり、天井の装飾や舞台頭上以外はシンプルかと思います。一階席は、少し床がふんわりアーチ型になっていて、これが長年の使い古しによるダメージなのか構造上のものなのかは分かりません。

【小ホールの一階席からの様子、こじんまりしつつも歴史ある雰囲気。】
二階席は、日本のコンサートホールの客席の階段式になっていて、比較的、どこに座っても平等に演者を見られます。私たち学生にとっては、試験の時にこの二階席に多くの教授たちが座り審査する場所でもあるので、苦い思い出が蘇ったりすることもあります。
—近況報告
遡ること11月3日の日本の祝日である文化の日と関連付けて、文化の日コンサートが日本人学生の出演で開催されました。毎年行われるこのコンサートには、多くの方が来場し満員となります。どのように始まったのか詳細を聞いたところ、日本文化に興味を持った方が提案をしたことが、きっかけだそうです。まだ10周年とまでいかない、ましてや他国の祝日に因んだコンサートに、これほど多くのハンガリー人が興味を持つことに驚きました。今回の出演にあたって、私が演奏したのは連弾6手でした。



【連弾6手の演奏中、学生の仲間にお願いし良い写真を撮ってもらいました。】
これは、一つのピアノに対し3人が同時に弾くもので、互いの譲り合い精神が物を言います。どんな人と弾くのかは会うまで分からず、さらには、どう演奏しようか話し合い作り上げていく過程に緊張します。ただ、こうした演奏の機会がなければ、なかなかピアノ科同士でもやらないので、どこかワクワクしていました。曲目は、チャルダーシュとハンガリー万歳の編曲で、今回の編曲は指揮科の方が担当してくれて、かつ演奏者としても参加してくれたので、曲の解釈を編曲者に直接聞ける状況はとても面白かったです。他の演奏者たちも、それぞれに準備して取り組んでいて、こういう機会があるのは日本人の留学生ならではだと思いました。
次回は、留学レポートの最終回となります。最後と称し、これまでに紹介したさまざまなことをもとに、全体を振り返る回とします。ヨーロッパでの初めての生活や留学が、いかに自分の人生を強く新たなものにしたのか、また近況報告も交えて、これらをレポートにしていこうと思います。

