2025,3,5
第15回 音楽院 授業内容②
前回に引き続き、リスト音楽院の授業の内容についての紹介になります。今回のテーマは実技系の授業での「室内楽」ですが、師事する先生との連絡や、また組む相手の人とのコミュニケーションや関係性、練習する部屋の予約など、さまざまな面でのタスクがあります。これらの内容を、私の体験とともにレポートにしていこうと思います。
—室内楽
学部に所属すると必修授業になる「室内楽」は、すごく奥深く繊細なものだと思います。もちろん取り組む曲もそうですし、何より、関わる人々との関係性が大きく影響すると感じます。まずシステムとしては、履修期間にクラス登録すると、事務局から担当の先生と室内楽のメンバーが提案されます。次に、授業初回の週にミーティングでの顔合わせでお互いに確認し、レッスン日程などを話し合います。最後に、特に変更などなくスムーズに行けば、すぐに取り組む曲を話し合い、練習しレッスンへと入ります。他には、すでに知り合いの人と約束をしている場合は、クラス登録の際にメンバーと編成を伝えて、先生の指名をするのみになります。ここでの編成とは、人数構成のことを指し、二人はデュオ、三人はトリオ、四人はクァルテット、五人のクインテットと、人数が増えるごとに楽器の編成もさまざまになり、より一層音楽の独創性が豊かです。もちろん留学とあれば、メンバーも国際化され対話も英語で、よりどうコミュニケーションを取るかが、非常に大きな鍵となります。たまに、同じ出身の人と組むこともあり、実際に私の知り合いも日本人同士で室内楽を組んでいます。互いによく分かり合える良さもありますが、他国の国民性の違いを感じつつも、色々と模索しながら関係性を築くのも面白いです。
どのようなことが重要なポイントとして挙げられるか、一つは、日頃からの連絡のやり取りです。ここでは、先生と室内楽メンバーへの連絡になります。主な内容としては、基本事項となるレッスン日程の変更や練習日の取り決めで、急遽な連絡にも対応します。上記に挙げたように、事務局からの選択によって当てられた先生も、音楽院のホームページに連絡先が無いなんてこともあり、実際に、私はFacebookから繋がりました。これは異例かもしれませんが、ただ、各先生の性格に合わせる柔軟性も必要みたいです。中には、メールやオンラインツールでもなく、電話対応しかない先生もいます。今の時代になかなか大変なパターンかもしれません。私たちの場合、私が先に連絡先を知った関係で、先生と室内楽メンバーの、いわば仲介役になって情報共有しています。この影響か、英語でのタイピングが成長した気がします。
もう一つに、何気ない会話です。これは、より良い関係性を築く上では欠かせないです。例えばレッスンが始まる前に、こちらでは必ず「元気?調子はどう?」と挨拶がわりに話が弾みます。ちょっと5,6分程度の気軽な会話ですが、自分らしくフラットに話すと、先生も嬉しそうな表情を浮かべます。
【リスト音楽院の本館のレッスン室、2台ピアノで受講している。部屋からの景色も風情豊か】
この延長線上に、レッスンで質問をする時の自身の気楽さに繋がってきます。先生と生徒だからと強張る緊張感が、親しみを持った安心感に変わっていくのです。単に、全ての人がそうとは言い切れませんが、こうした些細なことが皮切りに、色々な変化が生まれると思います。最後に一つ、練習室の予約があります。これも室内楽メンバーと日程調整しつつ、事務局の別窓口宛てのメールにて予約を、約一週間前には済ませます。
【音楽院の旧校舎、よく練習場所に指定される。古からの建物の造りで、毎度来るたびに不思議空間に入った感覚】
これも私が何度か対応した関係で、予約必須事項のテンプレートが出来上がった為、私が受け持っています。何せ、役割分担した後の、頼んだ頼まれていないの水掛け論争を避ける為にも、出来る人が率先して行えば良いのです。これら3つのタスクが、私なりに経験して得たものになります。
—近況報告
ここ最近、よく晴れるようになり日照時間も伸び、心穏やかな景色が広がっています。一時期は、気温はひどく低く、最低気温は-4、5度が通常で、凍えずにはいられませんでした。ここで気がかりなのが服装です。どれだけ着込めば良いのか、どのように寒さ対策をするか、ヨーロッパの人々の身なりは、私にとって良いお手本になります。
まずは履物ですが、スニーカーやお洒落な靴を履いている人はほとんどいないです。基本的に、大きめの靴底のあるショート丈の、もしくは丈の長い頑丈なブーツです。公共交通機関が発展していることが関係して、よく歩き回る生活背景から、ショッピングモールや大通りに多くの靴屋があります。でも、健康的には良いはずなのに、どうして体型だけはだんだんと脂肪が溜まっていってしまうのでしょう。不思議です。
次にジャケットやダウンですが、きちんと寒さ対策をしている人は、フード付きで膝丈までの長いものを着ています。極寒な国柄ならではの光景かもしれないですね。ごく稀に、薄手のものにマフラーだけの人もいて、寒さに強い耐性なのでしょうか。この長さが非常に重要で、お尻や膝裏から冷え始めるので、身体が芯から冷え切ってしまわないよう、身体全体を包んでくれる設計は大事です。
最後にニット帽子ですが、これも欠かせません。日本では一切被らなかったのに、ハンガリーでは冬の間の必須アイテムとなりました。現地の人たちも、マフラーに帽子を身につけて、さらにはマスクで顔の露出面積を減らそうとしている人もいました。
ヨーロッパなどでは、風邪を引いている証拠とされ、マスクをしている人を敬遠する傾向があると聞いていましたが、意外にも寒さ対策の一部と化しているのには驚きでした。とは言え、ここ一週間はすっかりよく晴れ、気持ちの良い気候に変わり始めました。ようやく、マフラーも外せるほどに気温も安定し、鳥の囀りも聞こえ、穏やかな日々がスタートです。
さて次回も、引き続き音楽院の授業内容についてです。ここでもまた、実技系と区分した授業の「現代音楽」について、どういう内容なのか、なぜ現代音楽が重要視されているのか、どういう解釈をもって取り組むものなのかといった、詳しい内容とともに紹介していこうと思います。