小雪のハンガリー音楽留学レポート【第6回 街の景観】

小雪のハンガリー音楽留学レポート【第6回】

第6回 街の景観

 今回は、ブダペストの街の景観に関してのレポートです。ヨーロッパ特有の、特に市内の中心部の街並みはどのような雰囲気なのか、また、有名観光地についても触れながらレポートしていこうと思います。

—街の様子

 初めてブダペストの都心部を訪れた時、私が抱いた第一印象は「歴史」でした。というのも、辺りを見渡せば歴史ある建物が軒並み連なっていて、ヨーロッパの風格を肌身で感じるほど、圧巻な光景が広がっていました。そんな光景に、トラムや電動スクーター、電動自転車など、現代を感じさせるものも街に定着している様子は、異世界に来た感覚を覚えました。ハンガリーの歴史的観点からみると、オーストリア=ハンガリー二重帝国時代が長く続いたハプスブルク家の統治の一環として、街の整備は同じ様式の建設工程で進行したようです。その為、どこかドイツやオーストリアのような、いわゆるヨーロッパ的建物が街を占めています。私が借用しているアパートも、大家さんのご両親が住まわれていた建物なので、およそ築100年は経っていると思います。また、ヨーロッパのEU加盟諸国の取り決めなのか、街の風景と景観を壊さないために、建物はよほどの事が無い限り工事や修理で直していき、街灯は淡いオレンジ電灯で統一されています。これらのおかげで、人々を魅了する歴史的街並みが保たれているのだと思います。

夜のブダペスト

ドナウ川付近の様子、街中の灯りが淡いオレンジ色で統一されていてどこか幻想的

—景観維持の工夫

 さて、街の景観維持の為に、施されている工夫がいくつか考えられます。それは、なるべく同じ高さの建物を建設することです。現代の建物の多くは、銀行やショッピングモールセンターなどで見かけるように、主にコンクリートやガラスで建築されますが、住居であるアパートは代々受け継がれながら住まわれているので、ほとんど姿形が変わることなく現存しています。これはある種、偉大な遺産かもしれませんね。なので、長きに渡り受け継がれている良い面もありますが、内装に問題があるという悪い面もあります。

 次に、電柱がないことです。こちらで生活を始めてから、一度も日本のような電柱を見かけたことがありません。もちろん、前回のレポートで公共交通機関を紹介した際の、トラムやバスの運行に欠かせないケーブルはありますが、電気を供給するのに必要な電柱は全く無いです。思いもよりませんでしたが、一体どのように電気が供給されているでしょうか。

 最後に、道路幅を広げていないことです。おそらく建物の築年を考慮した際に、各々の建物の間隔に変化がないのと同様に、道路にもないと考えられます。となると、路上駐車している車の間隔が異様に狭いので、交通の便に支障が出てクラクションが鳴り響くのも、何だか納得がいきます。私のアパートは、空港からの直行バス停留所が近い関係で、ホテルやアパートが多い住宅街ですが、それが故に道路幅が狭いので、郵便局や建設業の大きなバン同士が行き交う場面で、そっちがどけ、いやこっちが先だの威圧的クラクションの合唱が始まります。少し話が逸れてしまいましたが、人々の生活に合わせた環境づくりではなく、いかにそこにある歴史ある環境に対応する生活が出来るかが、ここヨーロッパでの基本なのかもしれません。

—有名観光地

 ここ最近、よく観光客の方々を至る所で見かけることから、ブダペストはかなり需要のある観光都市になっていると感じます。そこで、主な有名観光地をいくつか紹介します。

 まず、国会議事堂です。私も実際に行きましたが、歴史ある建造物が貫禄のある佇まいで、まさにハンガリーの主要都市を象徴しているかのようです。

国会議事堂、実際に中へ入り見学ツアーに参加も可能

国会議事堂の広場から撮った風景、奥行きがあり好きな光景の一つ

 ここから、地下鉄とバスでブダ側へ約20分移動すると、漁夫の砦です。19世紀後期から20世紀初頭にかけて、市街美化計画の一環で建築されたところからか、そこ周辺一角はまるで御伽噺のような、そんな世界観に包まれた不思議な場所です。

漁夫の砦周辺の街並み、どこか異世界な感じを漂わせる。

 実際に散策してみましたが、少し平地よりも標高が高く、風通りが良いので、観光がてら散策するには最適だと思いました。ここで少し耳よりな情報として、歴史ある有名カフェを紹介します。評判なクレーメシュは絶品で、クリームの層が多いので甘さが強めですが、カフェラテとの相性は抜群です。

有名カフェのクレーメシュとカフェラテ、かなりの甘さには覚悟を持って。

 さらにここから、トラムを2本乗り継ぎ約25分移動してペスト側へ戻ってくると、ブダペスト中央市場です。

ブダペスト中央市場、大きな倉庫のような場所で多くのお店を覗ける。

 多くの精肉店や青果店が軒並み連なり、二階にはお土産屋やフードコートで郷土料理も食べられ、現地の人々の暮らしも肌で感じられる為、お勧めの場所です。ここ周辺はドナウ川の隣なので、少し足を伸ばして周りを散策し風景を楽しめるのも良いですし、中央市場すぐの地下鉄の駅から新たな場所へ行くのも良いかもしれません。

 さて次回は、最近のハンガリー国内事情について、隣国ウクライナの戦争による影響や、それに関連した選挙運動も交えて、それらがどのように生活面や通貨事情に影響しているのかについて紹介して行きたいと思います。